知床旅行記(旅行というか週末の過ごし方)

知床でワークショップをする機会をいただいたきっかけや理由や流れをここで説明するのは難しいし可能ならば丁寧に、そう、面と向かって相手の表情を見ながら伝えたい内容。ここでは初めて知床に向かう際の飛行機内で偶然アーティストのエレナトゥタッチコワさんに出会ったことを話しておいた方がよいと思う。

数年前のアタミアートウィークで知り合って以来の出会いだったけれも忘れられないその顔はすぐ声をかけるに至った。女満別の空港で仕事の依頼主を紹介したり、行き先を聞いて同じ知床であることに驚いたり、そこで初めて「メーメーベーカリー」というパン屋のことを聞いたりした。

雪解けとメーメーベーカリー

メーメーベーカリーとシリエトクノートから広がる様々なつながりや状況のおかげでワークショップは、私が思っていた以上に何かが伝わったと思う。知床には合計2回ほどしか来ることは無かったけれど、私にとって墨田区に続いて気にかかる…大事な感じのする場所になった。

ワークショップが終わってから1~2年ほど知床に行くことは無かったけれど、メーメーベーカリーの小和田さんやシリエトクノートの中山さんたちが東京に来た時に出会ってご飯を食べたりカラオケをしたり、思い出はなかなか途切れることなく着々と痕跡を残してくれている。

AIR DOと夕焼け

そしてこの4月の半ば、やっとこさ、知床半島を再び訪れた。

ワークショップの際は依頼主が用意したレンタカーで女満別空港からウトロまでひとっとび(といっても1~2時間かかる)だった。今回は公共の交通機関を使った。まずバスで女満別から網走駅へ。網走駅から釧網線を使って知床斜里駅へ。知床斜里駅に着くとシリエトクノートの中山さんが待っていてくれた。彼女の車に乗って宿泊する「しれとこくらぶ」へ。

夜の網走駅はちょっと雰囲気が、ある

釧網線の一両車両。ここで高校生たちの青いやりとりが。

石川直樹さんの写真とプロモーション。やっと見れた。

しれとこくらぶ、お世話になりました!

祖父の代に地元の付き合いで譲り受けた(お歳暮として)温泉をもとにスタートした民宿「しれとこくらぶ」は市街地にある。手作り感のあふれる民宿は、やはり温泉が良質で素晴らしく、しれとこくらぶ1階で開業しているレストラン年輪も人気。夜中や朝早くはそりゃもちろん少ないが、夕飯時はご近所さんや宿泊客で賑わっている。朝食はお母さんの手作りを食べながら、お母さんとの会話を楽しむ。夜はハンバーグを頼んだ。夜と朝に温泉に入り、この後に書くが、自然ツアーで歩き疲れた体を癒した。

部屋が広い。

共働学舎のベーコンとソーセージ

ジュージューいってる豚のハンバーグ

レストラン年輪の雰囲気のよさったらもう

荷物を置いて中山さんの車で久しぶりにメーメーベーカリーへ。普段は外で見張りをしている犬のマコが中にいた。ピコという白い猫は…もしかしたら初対面だったかもしれない。羊たちは夜だったこともあって会わなかった。明日の仕込みをしている小和田さんと話しながら、中山さんがご近所の漁師さんからもらってきたという平貝を酒蒸しにして食べた。小和田さんが焼いて出してくれた共働学舎のベーコンに感動してしまい、何度も「美味しい」と言ってしまう。そのためだと思うけど、小和田さんから最終日にお土産でいただいてしまった。東京の家に帰って焼いて食べたら、もちろんメーメーベーカリーみたいに私の家の食卓は素敵じゃないから全く一緒の雰囲気で味わえないというマイナスはありつつも、味は確かに美味しかった。

メーメーベーカリーとピコ(白猫)

食器が実家の皿と酷似していて嬉しくなる。

共働学舎のベーコン

共働学舎のベーコンのあぶらが!

ハリに使われている木材もいい感じ

翌日、朝早くから知床自然センターに向かい、自然ガイドさんによる自然ツアーに参加した。歩いて原生林をかきわけ、「男の涙」と呼ばれる滝と「象の鼻」と呼ばれる雄大な崖を見る。往復で約3時間ほどかかったが、体感時間は約5時間ほどじゃないかと思えるほどに内容が濃かった。実際に出会った動物の数や種類はそんなに多くはない。ただ「自然」と表現していいのか「生命」と表現していいのかまだ迷う類(たぐい)の痕跡を星の数ほど見て、説明を受けて、理解しようとして、歩いた。オフシーズンだったこともあって、自然ガイドさんお一人につき私たち一グループのみという贅沢な状況だった。これはラッキー。普段はガイドさんお一人につき複数グループ、ピーク時/シーズンには二桁ほどらしい。

鹿の足跡が残る雪 

モモンガの食べたあと 

「男の涙」はまだ凍っていてチロチロ 

まるで怪獣映画のクリーチャー。本当は倒れた木。 

パノラマ撮影 at 象の鼻 

鹿とお尻

自然ツアーの詳細は別に書こうと思うが、とにかく熊に出会わなくてよかった。春は冬眠から目覚めた熊がいる。彼らはお腹が空いている。お腹が空いているとき、人間もそうだけど、とにかく食べ物に貪欲になる。自然の中を歩くというのはそういうことだ。美しいとかかわいいとか雄大とか、もちろん感じることもできる。しかしそれは自然の姿の一部分で、自然の中で生きるということは循環の中に入るということで、つまり「食べられる」ということ。ああ、これを言い出したらきりがないから、お昼ご飯で食べた鹿のミソカツの画像でも貼っておこう。

鹿のミソカツ

ウトロの「道の駅」で腹ごなしをした後は、グランドホテル北こぶしにある開発好明さんの作品、佐々木愛さんの作品を見に行く。着々と増えている作品たちを見て、ワークショップ前後の流れが丁寧につむがれていっているのを感じて嬉しくなる。

開発好明さんの未来郵便局。最北端の作品。 

佐々木愛さんの作品。分かりやすく斜めから撮影したけど、鑑賞は正面からがいい。 

Art in SHIRETOKO

その後、メーメーベーカリーに移動して休憩。パンを食べた。アンパンだ。美味しい。太陽の出ているうちに行ったので羊たちともしっかりとコミュニケーションできた。子羊も増えている。毛を触る。前回、数年まえに訪れた時に食べた彼女(羊)を思い出す。

ベーコンが練りこまれているバゲット 

メーメーベーカリーのアンパン 

顔の黒い羊

太陽が落ち切る前に「しれとこくらぶ」に戻り夕飯にハンバーグを食べて今日を終える。絶対に明日か明後日(東京に戻ってから)が筋肉痛の本番だとわかっていたので、温泉でとにかくマッサージをして筋肉をほぐす。喉が渇いたので自動販売機で水でも買おうかと外に出たが、目の届く範囲に動いている自動販売機がなかった。不便だと一瞬思ったが、水が綺麗だったことを思い出して水道水を飲んだ。


翌日(最終日)、

「しれとこくらぶ」をチェックアウトして「北のアルプ美術館」に向かった。山の文芸誌として昭和33年に創刊し25年間300号続いた「アルプ」。この雑誌に参加した作家の収蔵品の展示や、編集長だった哲学者「串田孫一」に関わる展示物のあるプライベートミュージアム。写真を見ておわかりいただける通りとにかく雰囲気がいい。収蔵されている作品が素晴らしい。もし難点を言うのであれば展示照明くらいかな。展示されていたテキストを引用しようと思う。「~山が文学として、また芸術として燃焼し結晶し歌となる場所であると思う」

開館時に植えられた林がもうここまで大きくなる 

林の向こうに見える本館 

庭のあちらこちらにある彫刻。そして壁の色が素敵。 

書庫から見た風景。ここで本に関するイベントも行われたらしい。 

畦地さんの山男のイラストがいい! 

串田孫一さんの書斎を再現 

原稿も。

美術館の後は羅臼へ。中村絵美ちゃんがつくったギャラリーミグラードへ。

知床半島を横断する道路がまだ開通していないので、下にぐるりと回る道路で羅臼へ向かうその道すがら。見える林や畑の広大さに面食らう。広い広い茶色い畑を左に見てしばらく行くと看板があり「この畑では**を作っています」と書かれていたんだけれども、この「**」の内容に驚いて運転していた中山さんも思わず急ブレーキをしてしまった。

どこのおでんがこの広大な大根を使っているんだろう…

ミグラードのある場所は海に面した道路沿いで、道の駅のすぐ隣。もともとゲストハウスだった建物をギャラリーに改装している。作っている途中の様子をFacebookなどで拝見していたので、いつか行ってみたいと思っていた。眼前にして、そして中に入ってその白さや部屋数の多さや、これから広がるであったろう未来について思いを馳せた。残念ながら絵美ちゃんは地域おこし協力隊の契約が終了して羅臼を離れることになってしまった。ミグラードの運営は別の人がおこなっている。

この外壁も塗ったんだろうなあ。 

ロゴもいい。 

中に入ると、かなりしっかりホワイトキューブ。 

展示部屋が4つほどあって、結構大きなギャラリー。 

カフェスペースとして運営されていくらしい。広い。 

作りこみの細かい部分にストーリーがある。

その後、ストーンサークルを見るために斜里に戻り、メーメーベーカリーへ立ち寄り、網走まで中山さんに送ってもらった。本当にありがとうございます。網走駅近くにある大広民芸店でセワというお守りを購入した。北から来た精霊が今、私の部屋を守ってくれている。ここの「セワポロロ」という民芸品が、無印良品の福袋に使われてから大ブレイクしているとか。

北海道には弥生時代がないらしい。 

パワースポット 

無印良品の福袋でブレイク 

今、私の部屋を守ってくれているセワ

最後に、

知床に行くようになってから「自然」と人間の関係について考えるようになった。関係という言葉を使うことに違和感を感じることもある。人間中心の世界観に疲れたり、人間中心の世界観に限界を感じたり、人間中心の世界の中で王様気分になっているならば、あなたには知床を訪れる理由があるはず。

こんな熊なんていないから。実際。

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