3. ネズミの丸焼きを食べた / エクアドル旅行記

エクアドルは気候が良く、ジャガイモやトウモロコシやバナナを中心に数多くの野菜や果物を育てることができます。食べるものに困ることがないので「エクアドル人の人となりは穏やかだ」と聞きました。「ミッションエクアドル その1」の報告で触れた市場の様子を見るとおわかりいただけるのではないでしょうか。市場だけでなく、カフェやレストランの食事も安価で食費にはまったく困りません。

ところがクイの料理は日本円で約2,500円ほどと高価な料理だったのです。二人前からの料理だったとはいえ一人あたり1,250円でもなかなか高い。さらに注文時に「1時間お待ちください」と言われてしまう。クイは特別な料理だと聞いていましたが、ここまでとは思いませんでした。

旅行の日記を書いたり、ビエンナーレでみた作品のメモを整理したり、ボーっとして1時間を過ごしていると目の前に白く大きなお皿が置かれました。


「そろそろよ」とお姉さんが嬉しそうに私に声をかけます。メモ帳を片づけ姿勢を正していると、後ろからこんがりと焼けた大きなネズミの丸焼きがやってきました。

A4の紙くらいの大きさに盛られたその姿は美味しそう。最初の感想は美味しそうでした。「皮は硬いから、フォークとかナイフを使わずにかぶりつきなさい」とお姉さんからのアドバイスを参考に、とにかくむしゃむしゃ。徐々に食べ方がわかってきました。1:皮とその下にある脂は味が濃いので、付け合わせのジャガイモや豆と一緒に食べる。2:肉は淡白だけどほんのり獣の味がするので、単独で味わう。3:味に飽きたら辛味調味料を使う。

半分以上食べたくらいから、徐々に微妙な気持ちになってきました。「肉」と「生き物」を同時に見ているような気分と言えば伝わるでしょうか…。ちょうど良いサイズ感なんですよね。ただたんなる「肉」と見るには小さい。「生き物」を実感させてしまう(エビや魚は感じない。それもなんでだろうと思うけど)ちょうどよい大きさなんです。美味しいんだけど、なかなか手が進まなくなっていきます。お腹が一杯になってきたのも理由の一つなんですが、それだけというには複雑すぎる感情の起伏。顔にも、なんとか箸をつけ食べ終わりました。

美味しかったんですよ。鶏肉のような食感でクセも少ないから食べやすい。エクアドルに行ったらぜひ食べてもらいたいです。

 ※写真は、空の皿のみでご容赦ください。クイってモルモットと同じくらいのサイズなので、ペットで飼われている人にとってはショックを与えるかもしれない。ちゃんと食べましたよ!


さて、後日インティニャンミュージアム(本当の赤道がある博物館)(※1)に行った時のことです。私は別のミッションのため赤道ならではのレクリエーションをまわるツアーに参加中していました。


赤道を示す線の上であんなことやこんなことをするツアー。また別のミッション報告で詳細お伝えしますが、とても楽しい体験でした。写真はダンスをしている様子ではなく、ペアを組んで力比べをするというレクリエーション。


1〜2時間ほどのツアーにはインディオの生活を紹介するコーナーもありました。人を埋葬する方法や、家屋ではどのような生活をしていたのかなどなど丁寧に説明があります。写真は壺の中に人を埋葬する風習を持つ民族の紹介。


家や道具の紹介と同時に食材として生きたクイも展示(飼育)されていました。私は思わず「クイをクエンカで食べたよ」とスタッフに話しかけました。サングラスの似合うイケメンスタッフは私に「どうだった?」と笑顔で聞いてきます。


複雑な感情の起伏。単純に「美味しい」とは言いづらい気持ち。私はなんて言おうかと悩みました。でも、彼は「美味しい」という回答を求めているに違いない、だって名物料理じゃないか。私は「美味しかったよ」と答えました。彼は少し顔を曇らせて(でも笑顔)「それでほんとにいいの?」と私の目を見て問いかけます。ああ、これは間違えた。私は頭をしぼり、言葉を選び、少し声のトーンを落として「心が揺れた。とても複雑な問題だと思った。」と、もう一度答えました。彼は少し満足げに「それでいいんだ。」と言い、ツアーに戻りました。

クイは本当に特別な料理だったんですね。

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 ※1 Intiñan Museum
http://www.museointinan.com.ec/

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